2024.12.18 ロザリオ学園 ブログ
随分古いコラムから2つのお話しをご紹介します。
まず、ひとつ目は、難聴の子を持つ親子のお話しです。
出産した母親は、産声を上げないわが子に気付きました。
その女の子は明るく元気に育ち、ろう学校に入学しました。母親は、わが子がろうあ者であることを他人に知られることを嫌がって手話でなく、口の動きで相手の言葉を読み取る口話教育に重点を置きました。
ある日、女の子が母親の背中をやさしくたたくので、振り返ると微笑みながら親指と人差し指で、のどを挟み上から下になでている娘がいました。
母親は、人の目を気にして「手話でなく口話にしなさい」と娘の手の甲をたたいたのです。
後日、子どもがしていたのは「お母さんが大好き」という手話であることを知り、母親は自責の念で大きな涙が頬を伝いました。
それから間もなく、手話教室の最前列に熱心な母親の姿がありました。
どのような手段であれ、子どもが精一杯に伝えたい気持ちを受け入れることの大切さを感じました。
ふたつ目は、出産をめぐる死生観のお話しです。
母親は、妊娠4カ月で、おなかの赤ちゃんは脳のない無脳児であることが分かりました。医師も家族も中絶を勧めたのですが、母親は「子どもの命を絶つことは出来ない」と産むことを決意し、体力づくりに精を出し、おなかの中で子どもを育て、無事に出産しました。
赤ちゃんは元気に産声をあげ、母乳を口に含みました。
しばらくして、自然と呼吸が止まり、亡くなりました。
そこには、短かったけれど、確かに人の一生がありました。
その子に一生を全うさせようとした理屈を超えた母親の切実な愛と命の出会いがありました。
もうすぐ、「クリスマスの朝」が来ます。
子ども達には、お願い事がいっぱい詰まったサンタさんからのプレゼントが届くことでしょう。
ロザリオ学園
本部事務局長 谷口秀人
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