2024.09.18 ロザリオ学園 ブログ
私が学生時代に出会った1冊の本。
表紙の、いわさきちひろさんが描かれた優しい少女の絵が印象的なこの本。
「窓際のトットちゃん」 著者は黒柳徹子さん
約80年前に小林宗作先生によって設立された小学校トモエ学園に、
トットちゃんこと徹子さんが通われた日々の様子が綴られたものである。
トットちゃんの奇想天外な発想と、ワクワクするような毎日。
なんて素敵な学校なんだろう。と、心惹かれ読み進めたことを覚えている。
それから数十年が経ち、ずっと心に残っていたこの本を改めて手に取り
読み返してみた。
トモエ学園の日常はこうである。
〇自然あふれる校庭に置かれた電車の教室。席はもちろん自由。
授業は決まった時間割があるわけではなく個々に興味のあるものから始める。
なので、こちらでは絵を描いている人がいて、こちらではアルコールランプで実験している人がいる。
といった風である。
〇クラスには、身体に障害のある子、日本語が得意でない子、様々な個性の子が集まっており、小林先生の「みんな一緒だよ」の言葉の通り、分け隔てなく一緒に活動しており、その中でそれぞれの特性が活かされる工夫が自然にされている。
〇問題行動ばかりおこすトットちゃんに、「きみは本当はいい子なんだよ」と何度も何度も投げかけた小林先生。そうしたお考えの元、子どもを人格者として認め、信じてくれる先生たち。
等々・・・。
こうした、子どもの個性を尊重し、主体性を育む教育が80年も前の、きっと一斉、画一的な教育が主流であったろう日本で、実際に行われていたということにとても驚いた。
現在、教育の現場では、子どもがこれからの時代を生き抜くためには「非認知能力」(意欲、忍耐力、コミュニケーション力等数値では測れない力)が重要である。と叫ばれているが、トモエ学園の主体的な生活は、まさしく非認知能力を育む理想的な毎日であるといえよう。80年も前の教育が今とても新しく感じる。
そして、何より驚いたことは、このトモエ学園はモンテッソーリ教育ではないかと思うくらい、モンテッソーリ教育に似ているということだ。具体的な教育の在り方はもちろんのことながら、子どもの持つ力を信じ、自発性を尊重するその精神にとても相通ずるものを感じる。
そして、奇しくも太平洋戦争の最中にあったトモエ学園と、世界大戦の最中にモンテッソーリ教育を広め続けたマリア・モンテッソーリ。軍国主義の時代を逆行するかのような教育を貫くことは、当時、大変な努力と、ご苦労があったことだろう。
しかし、そういう時代だからこそ、強く平和を望み、平和を築く子どもを育てたいとの願いが、共に教育の根底にながれているように感じ、そこにもまた、相通ずるものを感じる。
海の星幼稚園
園長 上田礼子
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