2023.09.01 ロザリオ学園 ブログ
皆さん、9月1日は、何の日かご存じでしょうか?
そうです。台風や高潮、津波、地震等の災害について認識を深め、それらの災害について対処する心構えを準備するために制定された「防災の日」です。
それでは、防災関連の言葉で、「正常性バイアス」という言葉は、ご存じでしょうか?
正常性バイアスとは、災害心理学等で使用されている心理学用語の一種で、予期せぬ事態に直面した時「こんなこと起こるはずがない」「大したことじゃない」「自分だけは大丈夫」と楽観的な方向に錯覚する心のメカニズムのことです。
この正常性バイアスは、日常場面でもしばしば働くものですが、災害時に過剰に働いた場合は、大きなリスクを招く可能性があります。
また、正常性バイアスと併せて語られるものに「同調バイアス」という言葉もあります。これは、「集団の中にいると、つい他者と同じ行動をとってしまう心の働き」を指す心理的用語で、日本人は特にこの働きが強く、本来なら危険が迫っている状況なのに、「誰も逃げてないから大丈夫だろう」と自分も逃げない選択をする人が圧倒的に多いとされています。
この正常性バイアスや同調バイアスのため被害が拡大した例は、2011年3月11日に発生した東日本大震災です。地震発生から、津波到着まで約1時間の有余があり自治体による避難警報も出ていましたが、多くの人々は、避難が遅れ津波によって犠牲となりました。
逆に正常性バイアス等に打ち勝った例としては、同じ東日本大震災発生直後の「釜石の奇跡」と言われている出来事です。
地震発生直後、釜石東中学校では、生徒が「津波が来るから逃げろ」と大声で叫びながら「指定されていた避難先のグループホーム」へ避難を始めました。しかし、生徒達は、「この場所も危険だ」と先生に訴えさらに高台の施設へ避難しました。その様子を見た付近住民も危険と判断し高台に避難します。そして、全員が高台に避難した直後3mの高さを超える津波が目前まで迫りました。
この事は、生徒たちが「あらかじめ指定された避難場所が安全である」という正常性バイアスに引っ張られることなく、冷静な状況判断をしてさらに安全な場所へ避難をし、それを見た人々も危険な状況であると判断し、全員が避難行動をしたことで、多くの人の命が救われました。
そこで、ロザリオ学園でも、各幼稚園では年間を通じて様々な自然災害や火災を想定した避難訓練を実施しています。
その避難訓練の中では、園児達に幼稚園で災害が発生した時は、自分の身を守るためにどんな態勢をとり、誰の指示に従うことが自分の身を守ることに繋がるかを意識付けしています。新入園児の中には、訓練自体が初めての出来事なので、パニックになり泣き出す園児もいますが、訓練を重ねることによって、冷静な避難行動がとれるようになってきます。
皆さんも、非常時において、正常性バイアスや同調バイアスにとらわれず、正しい判断を行うために、日頃から「もし自分や家族が災害にあったら」と「想像」しておくことが大切です。
近年の災害は、多様化、激甚化しており、予想を超える規模で発生しています。災害が起きた時に一番守らなければならないのは、自分やご家族の「命」です。
例えば、家族でデパートやホテルや遊園地等に行った場合、もしここで災害や火災が発生したら「どこに逃げたらいいんだろう」、「非常口はどこなんだろう」とちょっとしたことでかまわないので子供達を含め確認してみてください。
こんなふうに、想像し心構えをつくっておくことで、いざという時には、自分や家族を守ることができるはずです。
そして、あらゆる事態を想定し、ご家庭でも「家から近い避難所」や「安全な避難経路」などを日頃から確認しておけば、いざという時でも正常性バイアスや同調バイアスに引っ張られることなく冷静かつ迅速に避難行動をとることができます。そしてこれが、命を守ることに繋がりますので、普段の生活の中で家族みんなで防災や減災について話し合い、地域の防災訓練等にも参加してみてください。
安全管理部長
岡 耕司
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