2023.07.14 ロザリオ学園 ブログ
てんとう虫は、毎年5月を迎えると繁殖の時期となり、孵化、蛹化、羽化を始めます。その成長過程を子ども達にも見せたいと、蛹からにはなりますが、保育者が近くの山で見つけたてんとう虫の蛹を観察できるコーナーを作りました。
早速、蛹をのぞき込み、
「これ何?」
と、子ども達。成虫とは似ても似つかない姿に、これがてんとう虫になろうとは想像がつかないようです。
翌日、体が少し伸びた蛹を見つけました。「羽化が近い!」と思い、近くの子供たちを呼び、一緒に観察を始めました。
しばらくすると、殻が割れて頭が出てきました。
「体が長くなった!」
「もうちょっとで出てくるんやない?」
「あとは、おしりだけ!」
「がんばってえ!!」
「あと1ミリ!」
「出てきたあ!!」
10分ほどかけて殻を全て脱ぎ捨てました。喜ぶ子ども達でしたが、
「なんで黄色なの?」
と、素朴な疑問が出ました。
「生まれたばかりのてんとう虫は、黄色くて、黒い点々がまだないんよ。」
「いつ、オレンジになるの?」
「もう少し時間がかかるかな。」
「じゃあ、給食食べ終わったら、オレンジになってるかもよ!見てみようや!」
と、年中A君。
「触ってみる?」
と誘うと、年中Yちゃんが、そおっと人差し指で触れます。その慎重な指先からは、少し怖いけど触ってみたいという好奇心が伝わってきます。
「やわらかい!」
初めて経験する感触に驚いています。そんなYちゃんを見て、警戒心を緩めたのか数名の子ども達が自ら指を出し、てんとう虫に触れさせてもらいました。
てんとう虫の誕生をつぶさに見た子ども達は、命の誕生を祈るような気持ちで見守っていたに違いありません。小さな生き物が子どもたちの心を一つにして、喜びと感動を与えてくれた瞬間でした。
先程の年中A君、気になって給食前に、早速てんとう虫を見に来たようです。
「あっ、オレンジになってる!」
「点々も出てる!」
その後、給食が終わっても観察を続けていました。
「さっきより、点々が濃くなってる!」
A君の小さな探求心に応えてくれるかのように、てんとう虫は、後ろ羽が出て、オレンジ色は濃く、黒い点模様ははっきりと浮き出て、見事に変化した姿を見せてくれました。
翌日、登園するや否や数名の子どもたちが、カバンを背負ったままてんとう虫の所に集まってきました。昨日羽化したてんとう虫が気になっているようです。すっかり子ども達の知っているてんとう虫になっていましたが、
「触ってごらん」「やわらかい!」
体はまだ十分に固まっていません。子ども達と話し合い、それでもてんとう虫を外に逃がしてあげることにしました。てんとう虫の餌であるアブラムシが寄生しているしだれ梅の木に逃がすことにしました。
いつもはお着替えに集中できず時間のかかる年中Y君、なんと早かったことでしょう!一番に園庭に飛び出してきました。てんとう虫を自分の手に這わせ、落とさないように慎重にしだれ梅の木に這わせました。元気よく上へ上へとのぼっていくてんとう虫をじっと目で追いながら、葉の陰に見えなくなるまで見守っていました。
私たちの目の前で成長する様子を見せてくれたてんとう虫、まるで、その息遣いや鼓動までが聞こえてくるようでした。生命の神秘や力強さを感じ、心を豊かにしてくれる何物にも代えがたい大きな感動を味わいました。
子ども達の心を捉え、夢中にしてくれたてんとう虫に感謝をすると同時に、感覚を磨く唯一の時期である幼児期にこそ、生き物に触れ、身近に感じる体験の大切さを感じました。小さな生き物を大好きな子ども達が増えてくれることを期待して、これからも、生き物と触れ合う体験を子どもたちと一緒に楽しみたいと思います。
八幡浜聖母幼稚園
園長 魚海ゆかり
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