学校法人 ロザリオ学園

新着情報News

2023.01.30 ロザリオ学園 ブログ

幼児と自然

ロザリオ学園 ブログ

八幡浜聖母幼稚園の園舎背後に鎮座する標高130mの愛宕山。その中腹に時報塔が設置されています。

正午、「みかんの花咲く丘」のメロディが山のほうから聞こえると、「どこから流れてくるの?」と疑問に思っていた子供達。年長さんが代表して、実際に実物を見に行くことにしました。

子供達はこの日をとても楽しみにしていました。

いざ、出発です。

 

台風が通り過ぎた後で、折れた枝や枯れ葉が散乱する石段や坂道を軽快に登ります。途中、保育所と中学校があり、出会った園児さんや生徒さんに元気に手を振ったり、丸々と太ったダンゴ虫やセミの抜け殻を見つけたりしながら道中を楽しみ、目的地に着きました。

 

 

この時報塔は、午前6時「八幡浜漁港の歌」、正午「みかんの花咲く丘」、午後6時「夕やけこやけ」のメロディを心地よい音色で奏で、市民に時を告げます。

現在の時報塔は2代目(正式にはミュージックサイレンといいます)、初代の隣りに設置されており、役目を終えた初代は、全体を枯れ葉で覆われ年月の経過を感じます。一方、タスキを託された2代目は、心なしか頼もしく見えます。

「ここから鳴っているんだ!」子供達は納得したようにしばらく眺めていました。

 

時報塔が設置されている所から、丁度当園が見下ろせます。

「あの赤い屋根が聖母幼稚園よ!」

「うわあ、本当だ!」

大きく赤い屋根の我が園は、とてもよく目立ち、上から見ても容姿美しく素敵です。そんな中、「どこ、どこ?」とNちゃん、なかなか幼稚園を見つけることが出来ないようです。何とか見つけて欲しいと、保育者が必死に場所を示しますが、とうとう叶いませんでした。

「先生、フジも見えるよ!」

「あっ、すき屋見えた!」

子供達は知っている建物を次々見つけ、はしゃいでいます。すると、誰からともなく

「ヤッホー!」「ヤッホー!!」の掛け声が。

辺り一帯に、子供達の元気な声が響きました。その後、大きな穂を垂らしたエノコログを見つけ摘んだりしながら楽しみました。

するとK君が、うっそうとした茂みの中に檻を発見。それがイノシシやタヌキ、ハクビシンを捕獲する檻だとわかると、

「えー、ここにイノシシいるの?」

「どうして捕まえるの?」

「捕まえてどうするの?」

矢継ぎ早に質問が飛び交います。初めて目にする物騒な物体に、子供達の想像が膨らんだようです。
その後みんなで食べた冷たいゼリーの味は、格別のようでした!

 

 

 

次の日、ある女児のお父さんが話された事です。

「昨日のお散歩は、とても楽しく達成感があったようで。家に帰ったらいきなり『勉強する!』と言って一人で始めたんです。」

と我が子を感心されたようにお話されました。その子は、帰りの急な坂道を保育者の手を握りながら恐る恐る下りました。一歩一歩に全神経を集中させているように見えました。

「坂道が怖かった。」とご両親に話したそうです。皆より後れを取りながらも最後まで下りきった達成感は、とても大きかったに違いありません。この体験が自信となり、「勉強する!」という意欲につながったのだと思います。子供が自身の可能な力を存分に使い、満足感や達成感を味わうことの出来る取り組みの大切さを改めて知ることになりました。

 

 

自然豊かなこの愛宕山は、中腹50m程まで車道が通り、徒歩でも上り下りし易いため、毎日早朝散歩を楽しまれるご高齢の方もいます。八幡浜市の避難所に指定された保育所、中学校もあり、市民にとっては、身近で欠くことのできない山です。

次回、再びこの山を訪れ、前回とは反対側となる市内西側の眺望を楽しみ、時報塔から流れるメロディをすぐそばで聞く計画をしています。眼下に広がる青い海、海を行き交う漁船やフェリー、切り立った山に作られた段々畑、遠く向こうに視線を移すと、日本一細長い半島である佐田岬半島もかすかに見えます。天気の良い日はそこに設置された風力発電機を見ることが出来ます。この唯一美しい絶景を子どもたちの目にも触れて欲しいと思っています。

 

自然の中に身を置くと途端に心が開放され、安らぎます。そして、少しずつ研ぎ澄まされていく感覚を覚えます。子供達はどう感じるのでしょうか。

大人には点のようにしか見えない極極小さな虫までを発見する幼児には、いつも驚かされます。この神秘的ともいえる特別な感受性を授かった子供達は、この感受性を通して、この自然をどう感じ捉えるのでしょうか。きっと自然のほんの小さなささやき声も聞き逃さずに自然との対話を楽しむことでしょう。大人はどんなに努力しても立ち入ることの出来ない子供と自然の優しく穏やかな時間が流れることでしょう。

古里のこの豊かな自然の中での体験を楽しい思い出として記憶にとどめ、見た風景や聞いた音、嗅いだ香りや触った感触と共にふと思いだし、懐かしんでくれると嬉しく思います。

そこに隣りに居たお友達の顔も思い浮かぶと最高の思い出となることでしょう。

八幡浜聖母幼稚園

園長 魚海ゆかり

カテゴリー

アーカイブ